広い天面をいかした「絵画性」
広い天面をいかした「絵画性」も、日本の伝統的履物の大きな特色と言えるでしょう。
実際に浮世絵などを入れた履物もありますし、植物や竜虎などのモチーフを彫刻した履物もあります。
職人が一つ一つ筆で手描きした絵が入ったもの、金銀の粉で描く「蒔絵(まきえ)」と言う伝統技法で絵入れしたもの、光る貝を薄くスライスして埋め込む「螺鈿(らでん)」という伝統技法、様々な色や質感の革を寄せて面白いデザインにする「切り継ぎ」など伝統的な絵柄からまるで現代アートのようなデザインまで、ここまで豊富な表現ができる履物が、いったい他にあるでしょうか?
見えないところにこそ凝る
もちろん、この天面のデザインは履いている時には見えません。しかし、歩くたびにちらっちらっと見え、脱いで玄関に揃えられたときには、まさに絵のように目を惹き付ける、それが日本の伝統的履物の独特な面白さなのです。
着物や羽織の驚くほど意匠が凝らされた裏地や、ぱっと見には無地にしか見えないのに近づくと精緻な模様が染められた小紋柄など、日本の美意識にある遊び心です。